NOVELS 小説
ひなビタ♪コラボ
第5話
センスと意志
凛よ…。
集った協力者のおかげで、私たちは神の試練を突破したわ。
ゴーレムは協力者たちに翻弄され、か弱き兎が足元をすり抜けることに気づかなかった。
私たちは見事、ジルコンマインへ潜入を果たしたわ。
この洞窟はとても不思議……神聖で清廉な気配で満ちている。
このまま奥へと進んでみるわ。
危険がないといいのだけれど。
凛よ…。
坑道は天の庇護を拒絶した闇で満ちているわ。
ここにはんこ屋がいればもう少しにぎやかでしょうけど、深々と満ちる暗闇の恐怖に言葉までも攫われたようで、皆、一様に黙してしまったわ。
このポストもいつまできちんと投稿できることか……。
臆病を絵を描いたような洋服屋の提案で、歌いながら進むことにしたわ。
私は少し抵抗があったのだけれど、この煩わしい状況を打破する為に仕方なく同意したわ。
あたりの反響する歌声はまるでライブ会場のようで、恐怖に打ち勝つことに成功したみたい。
……ああ、洋服屋がまた面倒な注文を付けてきたわ。
このポストを見ている人に当てて、補足説明が必要、だそうよ。
全く、面倒なことね。
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レコード屋:山形まり花
洋服屋:和泉一舞
喫茶店:春日咲子
はんこ屋:芽兎めう
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これでいいかしら?
凛よ…。
生き物を一切拒絶する死の洞穴の奥に、幾千の星々が降臨したわ。
いまだ手付かずのジルコン鉱脈が広がっていたということ。
これを持ち帰ればいいのかしら。そうすれば、すべてがうまくいく?
はんこ屋と再会し、この国の教皇は目覚め、私たちは元の世界に帰れる?
……そのように甘い夢に浸れるほど、私たちはもう夢見る子供ではないわ。
事態はそう簡単には好転しない。私たちを包むのは依然として困難な艱難辛苦……
……ちょっと待って。
とんでもないことが起きたわ。
考えがまとまらない……。
少し時間を頂戴。
凛よ…。
レコード屋が触れたジルコン鉱石がキーボードに姿を変えたの。
有り得ないわ……単一物質が複雑な電子楽器へと一瞬で構造変化するのかしら。
しかも電源なんてどこにもないのに、そのキーボードからは電子音が響くなんて。
レコード屋はずっとはんこ屋や教皇の無事を願っていた……。その想いが奇跡を起こしたのですって。宇宙の物理法則では到底考えられないとんだオカルティズムの類だけれど…そもそもここは私達の住む世界ではないわ。
これがジルコンギア……持ち主のセンスと想いの力で奇跡を起こす、この世界における真理ということなのかしら……。
レコード屋に刺激されたのか、なんと洋服屋が手にしたジルコンもベースに、喫茶店のジルコンもギターに変化を遂げたわ。
私たちが元の世界で使っていた楽器ととても良く似た形で、アンプがなくても音が響く特別製。
私以外は皆、センスも想いも強いのね……。
凛よ…。
恐ろしいことが起きたの。
鍾乳洞の奥で帰り支度をしていた時、見たこともない恐ろしい爬虫類型のモンスターが襲い掛かって来たわ。
レコード屋が長い爪で引き裂かれそうになって……私、夢中で……
気づいたら、手中に愛用のギターに似た楽器を持っていたわ。
その音色が邪悪な影を打ち払い、モンスターたちは逃げて行った……
これが私のジルコンギアなのね。私にも強い想いはあったんだわ。
私たちは話し合い、ジルコン鉱石を一つ持ち帰ることにしたの。
当然、はんこ屋の分よ。あの子なら、きっとこの石を目覚めさせることができるはず。
再会できると、私たちは強く信じてる。